朝から寒い日だった。

朝から寒い日だった。

仕事が終わり、六本木のオフィスを出たらもっと寒くなってた。

猛烈に暑かった今年の夏がうそのようだ。 JVCのプロジェクターが欲しくて、店舗へ

手にもって出た背広をはおり、乃木坂に向けて六本木の坂を歩き出した。

街路樹のスズカケノキくんはまだ葉っぱが元気についていて秋はまだまだこれなんだそうだ。

残念ながら、家族に言わせると猫背気味のわたしなんだそうだ。

わたしはじぶんをナイスガイだと思い込んでいるんだけど。

で、おそらくそんな寂しそうな前傾姿勢で坂を淡々と登ってゆくと、先の方からこつこつという音がした。

こつこと。こつこつ。。

見上げると若い女性が白い杖をにぎってた。

白いブラウスとスカートだった。

もう寒いだろうに。。

かのじょの前方には先ず小さな横断歩道があってそこは信号機も無い。

わたしはどうするんだろうか?

じぶんがどうするのか興味深かった。

かのじょは手前で慎重に一旦止まってから、またそろそろと渡った。

よかった。。。

さらにその10メートル先は信号のある交差点がある。

そこには帰宅のサラリーマンが大勢、信号が青になるのを待っていた。

かれらは後ろから近づいているかのじょに気が付いていない。

こつこと。こつこつ。。

わたしはかのじょの数メートル後を追っていた。

これはヤバイなと思い、わたしはかのじょのところに追いついた。

かのじょは杖を叩きながら交差点に近づいた。

わたしはちょっと待ってと言おうとしたとたん、信号が青に変わった。

かのじょはとんとんとしながらそろそろと交差点を渡り始めた。

よかった。。。

わたしは、並列してかのじょの側に立って横断した。

かのじょが渡り終えるまで黙って側についた。

へぇ~、わたしってそんなことをするんだと驚いた。

結局、かのじょには知られずにいざとなったら動けるようについていた。

自分勝手で短気なわたしがそんなことをしたのだった。。

渡りきったのを確認し、わたしはまた乃木坂に向けて速度を上げた。

後ろを振り返って見た。

22歳ぐらいだろうか。

すこし上方を見上げてうっすら笑みを浮かべながら、丁寧にあるいてた。

だれが見守っているのかを、おそらくきみはいつも知らないのだろう。

でも、どこに行こうがきみをいつも大勢の視線が守っているんだろうなと信じられた。

勤め人なのかな?

どうも服装からすると就活の帰りの移動のようにも見えるが、

それだったらここらへんの地理はわからないだろう。

きっとこの近くの会社に勤めているんだろう。。

目が見えなくても生きてゆかねばならない。

必要ならひとには助けてもらうしかなくて、

出来るだけじぶんでできることはするしかない。

それは事実以上でも以下でもなくて、

他者に期待したり他者を裁くこともないであろうかのじょ。

白いブラウスのかのじょはとても清清しく見えたのですよ。

乃木坂から地下鉄に乗り、途中で小田急に乗り換え神奈川の自宅に向かった。

やっぱりそうゆうことはあるんだね。。

電車に乗ると、若い女性が優先席に座ってた。

別に若いひとが座っていてもわたしは当然だと思う。構わない。

でも、大学生なのかな。

かのじょは良き服装、ルックス、ナイスバディにも関わらず、

帰宅で混雑した電車内で足をでんと組んだのだ。

不満ぎみに腕を組み、彼女の前(わたしの左隣)のおじさんなぞ眼中にも無く、不遜な表情で足を組んだ。

おじさんはすこし後ずさった。

彼女の靴が仮におじさんに触れても、問題じゃない。

おじさんが足をけがするわけでもないし、泥がべったり相手につくわけじゃない。

すこしも実害は無い。

ちらりとスマホを見てはまた憮然とした。

ずっと足を前方に出し続ける。

でもきっと、本を読んではいたが前に立ったおじさんは快くは思っていなかっただろうな。。。

なにか怒りの表情と他者を省みない若い彼女。

健気に白い杖をこつこつ叩きながら前に進んだ盲目のかのじょ。

いやぁ・・・いかにも日記に書いてくださいと言わんばかりのお話だったのですよ。

で、わたしはあまりにも出来すぎたこの対比を見せ付けられて、かえって書きにくい。

だって出来すぎなコントラストじゃない?

でもね、なんにも書かないのも癪だ。

で、やっぱり誘惑に負けつつ書くことにして、まぁこうして書いてる。

持っているものでさえ不満なひと。

奪われ今残されたもので感謝するひと。

わたしにはそんなふうに見えたのだ。

いったい神は何を考えているんだろうか?

いったい神は何を試したいんだろうか?

じぶんがどちらを素敵なひとだと思っていたかは明らかだった。

でも、そんなふうに決め付けたわたしはどこかが危ういかもしれない。

どこなんだろうか?

ひょっとして、穏やかな顔の白杖の君は内心、疲れぼやいてたのかもしれない。。。

足組の女性は何かの心配事が充満した、気を配れないただの不思議ちゃんだったのかもしれない。。。

瞬時に善悪を判断したわたしは、ただのひとりよがり野郎なのかもしれない。。。

でも、まあいいさ。

だれにも頼らずに必死にあの坂をこつこつと登っていたかのじょは、

事実、誰にも迷惑はかけなかったんだ。

意図がどうであろうが。

もし、神が居るんだとしたら、

良きひとにはさらなる試練を与え続けるのだろう。

どんなにコウベを低くしてももっと下げなさいと。

傲慢なものにはそんなプレゼントはあげないという、悪気があるかもしれない。

傲慢であることに気が付かないようにさせるんだ。

こわぁーっ。

良きひとには違う対応を取る。

失うことによって、世の儚さと切なさと、にんげんの素晴らしさを知りなさいと。

こわぁーっ。。。。

ちなみに神さま、

 わたし、十分に中途半端なこの現状品格に満足しております。はい。

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